草花に感謝する理由 他1篇
さみしい汽車のお話
汽笛は好きだけど
汽車は嫌いなのだと
むかしむかし
さみしがりやの
ある詩人さんが
書きました
だって汽車は、
遠くへ行ってしまうから。
それが理由です
もしかしたら
わたしは
汽車に生まれて
きたのかもしれません
いつもいつも
人から町から風景から
遠ざかりながら
生きている
もし、わたしが汽車なら
どうか神さま、
やさしいひとのそばから
わたしが
遠くへ行って
しまいませんように
草花に感謝する理由
おじぎをするように
その花弁や葉を
しずかに垂れている花
祈るために組んだ、
指のかたちを取りながら
さみしく閉じていく花
言葉をもたない草花たちが
すまなさそうに
あなたに詫びている
あなたのために
ひっそりと祈っている
やさしくしてくれたあなたに
なにひとつできなかった、
わたくしのかわりに。
そのようなすべてが、
わたくしが
草花に感謝する理由