十五夜の翌晩に書いたお話
静かな夜です…
十五夜だった昨晩は
絵に書いたような
満月が空にありました
月明かりのない今夜は
絵に書いたような
孤独がここにあります
満月は白うさぎの故郷
孤独はわたくしの祖国
かれの故郷も
わたくしの祖国も
夜とともにある
†
虹(にじ)
花(はな)
指(ゆび)
髪(かみ)
瞳(ひとみ)
唇(くちびる)
霙(みぞれ)
すべて同じことであると
教えてくれたのは中也でした
いつかは消えてなくなる
どんなに美しくても
どんなに深く愛しても
†
悪魔よりも孤独なのが
「漂白者」であると
教えてくれたのは朔太郎でした
どこにも家郷を持たない者が
「漂白者」であるならば
わたくしもまた
そうなのかもしれません…
どこにも家郷を持たぬこと
孤独を祖国に持つこと
さみしい言葉遊びです
†
白うさぎが死んでしまうほど
さみしい夜には
まあるいお月さまを
思い浮べることにしております
お月さまにも
帰る家がありませんから
もしかしたら…
お月さまのからだが
あんなにまで冷たいのは
そういう理由によるのかもしれません
今夜も静かな
そして、さみしい夜です…