二枚の葉書(はがき)のお話
手のひらが もし
この世界に一枚しかない
たいせつな葉書なら、
わたくしは
人生が終わるまでに
二枚のたいせつな葉書を
どこかのだれかに
出すことができます。
とてもとても
たいせつなことを書いて。
いえ じつはもう
わたくしはその葉書に
とてもとても
たいせつなことを
こっそり書き終えています。
ふたりで歩くときに、
わたくしが
あなたと手をつなぐのを
いつもためらうのは、
街をゆく人たちの目が
気になるからではなく、
あなたにこの葉書を
手渡してしまうことが
ちょっぴり
恥ずかしいからなのです。